世間知らずの私
20歳の時に、新卒で初めて就職した動物病院での事です。
地元から少し離れた町の、とてもアットホームな病院でした。
就活でのインターンシップから印象は良く、あちらも私を見込んでくれたので、スムーズに就職へと繋がりました。
先輩スタッフも優しく、何より院長先生とその奥さんが本当に面倒見の良い、親戚の伯父や伯母のような温かい方たちでした。
地元から離れた場所という事もあり、私はアパートを借りて一人暮らしをする事となったのですが、そのお世話も院長先生夫妻がしてくださいました。
職場からとても近いアパートでした。
当時社会人になりたての私は本当に無知で、ただただ感謝の気持ちでいっぱいでしたが、今思うとこの時から、おかしいと気づいていれば良かったと思います。
執拗なお誘い
いざ仕事が始まり、一番最初に先輩に言われた事は、「○○ちゃん院長先生には気をつけてね」でした。
よく分かりませんでしたが、地元から出て一人暮らしをしている私を、娘のように思ってくれていて、過剰に心配やお世話をしてくれているだけだろうと、安易に考えていました。
仕事にも慣れてきてしばらく経った頃、頻繁に夜ご飯のお誘いを受けました。
帰っても一人で可哀想だと、思われてるんだと思いました。
そして仕事中には、私がカルテ整理を素早く終わらせた時、「おりこうさんだね~」と頭を撫でられました。
そのとき、初めて気持ち悪いと感じました。
病院ではみんな決まった制服(ナース服のようなもの)を、自分に合ったサイズで注文して、着用しなければならなかったのですが、就職して私は少し痩せてしまい、サイズを一つ小さいものに変更しました。
先生は「痩せたね」と言って制服を…
院長先生はその変化にもすぐに気づき、上から下までじっくり見てきて、「痩せたね」と言って制服に触ってきました。
私が最も怖かった事は、夜友だちとごはんに行っていて、帰りが遅くなった次の日、出勤早々院長先生は、私に「昨日どこか行ってたの?電気ついてなかったけど。もしかして彼氏いるの?」と言われました。
あの時、血の気が引いたのは鮮明に覚えてます。
いつから私のアパートに見張りに来てたのか、毎日見に来てるのか、行動をどこまで把握されているのか、本当に恐怖でしかなかったです。
入社当初、優しい先生だと思っていた自分を、笑ってやりたい気分でした。
結局、まったく違う理由で退職する事となりましたが、もちろん親には相談する事ができず、一緒に働く先輩にも、気を遣わせると思い、当時は誰にも相談する事ができませんでした。
取り返しのつかない程のショックを与えられた訳でもないので、トラウマが残ったり、その後に影響した事はほぼなかったのですが、できればもう二度と会いたくない人の一人です。
一生懸命働こうと頑張っていた私の気持ちを、踏みにじったと思うと、腹立たしい気持ちだけが残りました。